『ボタ山であそんだころ』 石川えりこ さく・え(福音館書店)絵本作家でありイラストレーターの
石川えりこさんの講演会に行って来ました。
石川えりこさんが生まれ育った町には炭鉱があり、石炭は町の人々の生活を支えていました。この絵本の主人公えりちゃんは、作者自身で、昭和40年の福岡県嘉麻市(旧稲築町)の様子が描かれています。
石炭は石や泥と一緒に掘り出されるため、余分な石や泥は「ボタ」と呼ばれ取り除かれます。その「ボタ」が一ヵ所に積み上げられて山のようになったものが、「ボタ山」です。
ボタ山は炭鉱の町には必ずある、子どもたちの遊び場だったそうです。
この絵本の大部分は、炭鉱の町の子どもたちが楽しく学校に通い、大人のお手伝いをしたり、元気に遊ぶ何気ない日常が描かれているだけですが、お話の終盤、えりちゃんのお父さんが働いている炭鉱でガス爆発が起こります。えりちゃんはこの時、小学3年生で、事故によって仲よくしていた友達とも離れ離れになってしまいます。
ご本人の了解を得て写真を掲載しています。
石川えりこさんは、講演会の中で、この絵本が出版されたいきさつを語ってくれました。
現在59歳の石川さんは23歳の時に一度、炭鉱の絵本を描いてコンペに出しています。その時、審査員から「他にもっと伝えたいことがあるのではないか?」と指摘されたそうです。
彼女はその時のことを振り返って、「コンペに出した炭鉱の絵本は炭坑夫のことを描いたフィクションで、嘘だった」と言っていました。
石川えりこさんは、昭和40年6月1日、237人の命を奪った山野炭鉱ガス爆発事故のことが自己完結できず、それをずーっとひきずっていたのです。
「大人は世の中で起こったことを子どもにしっかりと説明してあげないといけない。それが為されていないと自分のように胸の内にモヤモヤしたものを抱えながら生きていくことになる。」石川さんの言葉はとても説得力のあるものでした。
この絵本の凄いところは、現代の日本が抱える社会問題を言葉以上に画が物語っていることです。
力強い鉛筆のタッチがそのことを突き付けるように迫ってきます!
大人が子どもと一緒に読んでほしい絵本です!
余談ですが、炭鉱は絵本にしても売れないと、断った出版社もあったそうですが刊行されました。
福音館よ、よくぞやってくれました!
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